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拡大された住宅ローン減税は「一五年間で最人正八七万五〇〇〇円の減税が受けられる」というのがウリだが、五年たってもまだ五〇〇〇万円の借金が残っているというのは、一億日以上の家を貰ったりした場合だけだろう。
普通のサラリーマンの借入可能額からすれば、どう考えても非現実的な数字で、通人な減税効果を国民に印象づけるための「まきエサ」の臭いがプンプンする。
年収六〇〇万~七〇〇万円の一般的なサラリーマン家庭では、借入可能額から見て、一五年間の減税総額はせいぜい三〇〇万円前後というのが常識的な見方だ。
金利や借入額、返済期間などの前提条件によっては減税総額は二〇〇万円程度に抑制される。
これが普通のサラリーマンにとっての現実的な数字であって、この程度の減税総額なら、これからも物件価格が値下がりしていくだろうからずいぶんおつりがくる話だろう。
拡大されたローン減税のメリットなど知れたものなのだ。
戸建ての例だが、九八年四月と比べて一年もたたずに全国平均価格は九九年一月で約三〇〇万円も値下がりしているのだ。
マンションとて同じである。
また譲渡損失の繰越控除は、もう一つの優遇税制の目玉だが、残念ながら、これも一般のサラリーマンにはあまり縁のない話である。
拡大された住宅ローン減税との併用が認められたため、確かに減税効果は大きいが、その恩恵に浴せるのは、含み損を吐き出して、なおかつ新規購入分のローンが組める人に限られる。
売却損が一〇〇〇万円を超える人は、いくら減税があるといっても、相当に資力がないと、新たにローンを組むのは難しい。
所詮、富裕層向けの買い換え促進策で、普通のサラリーマン家庭にはほとんど関係のない話なのである。
「いまが買い時」の中身なんて、一皮めくれば、こんなもの。
別に人騒ぎするほどのことではない。
にもかかわらず、洪水のように「いまが買い時」「これがラストチャンス」の声が聞こえてくるのは、それが景気浮揚の切り札として何が何でも庶民に住宅を買わせたい政府の意向に添った、事実上の官民合体のマイホーム・キャンペーンだからだ。
九八年秋、政府は公庫金利を史上最低の二%に引き下げたが、そのとき、「これ以上の引き下げはない」と金利底打ち宣言を行った。
「あとは上がるだけ。
早く買った方がトクですよ」と金利先高感を煽るのが狙いで、実際、年末には、すぐさま〇二一%引き上げ、二・一%にした。
また九九年四月未にも〇二一%引き上げて二・四%としている。
今回の住宅減税にしたって、わざわざ「二年間」の時限措置にしたのは、「一年以内に買わないと税負担が増して損で思ったほど減税効果は大きくない「新住宅ローン控除制度」の減税効果今、一般の所得税減税後における試算であるが、一定のモデルによるものでありあくまでもひとつの目安である。
※ここにデータ掲載されている数値等は不動産協会の試写による「日本経濱新聞」日仁新制度になってトクをするのは170万円程度。
「もっと物件価格は下がりますよ」と庶民にプレッシャーをかけるためだ。
体のいい脅迫ではないか。
これで住宅がとぶように売れれば、金融業界はもちろんのこと、家電、家具、寝装品から台所用品、生活雑貨まで、裾野の広い住宅関連産業が活気づくし、何より大量の在庫を抱えて青息吐息の不動産業界が一息つける。
その思惑から生まれた政府主導の一大キャンペーンなのだ。
もっとも、「政府や業界の思惑がどうだろうと、」生住める良質な住宅が安く手に入るなら、それでいいじゃないか」そういう意見もあるだろう。
なるほど、それはその通りだが、残念ながら、行政が法改正などを使って庶民にマイホーム購入を仕掛けているときは危ない物件が多いのだ。
最近では九七年四月に消費税が三%から五%に引き上げられたときがそうだった。
「三%のうちに買わなきゃ損だ」という消費者の焦る気持ちを逆手にとって、やっつけ仕事の、とんでもない欠陥住宅・欠陥マンションが数多く売られた。
「いま買えば二%安い。
高額のものだからいま買った方がトク」。
その気持ちは、わからないではないが、マイホームの取得を購入コストの損得ばかりで考えていると、肝心の物件の吟味がなおざりになってしまう。
「二%トクしたつもりが、欠陥物件だった」では泣くに泣けないではないか。
家を買う前にまず何を考えるべきか衣食住は人間の欲望の原点だが、それらを欲したとき、最初に考えるのは、「衣」「食」であれば、「何を着たいか、何を食べたいか」であって、財布と相談するのはその次だろう。
「住」も同じで、マイホームがほしいと思ったら、立地や周辺環境なども考慮して「自分も含めて家族ともどもどこに住みたいか、どんな家に住みたいのか」をまず考えるべきだろう。
そうでないとおかしい。
しかし実際には「最初に予算ありき」で、とにかく財布の許す範囲内で「買えるものを買う」という人が多すぎる。
物件の吟味など二の次で、ほとんどの人はモデルルームに行っても「設計図書」すら見ようとしない。
もっぱら興味の対象は、間取りや専有面積や内装設備であって、とりわけ決定権の大半を握る女性は、キッチン・バス・トイレの水回り三点セットの機能性や見てくれにチェックの目を集中させる。
内装設備なんて躯体構造など住宅の基本性能に比べたら、チェックの重要性はずっと低いはずなのに、そのことに気ついている人は驚くほど少ない。
これでは不動産業者に足元を見られるのも無理はない。
見てくれだけ恰好のいいモデルルームをつくるはずである。
高い貰い物だけに財布と相談するのは当然だが、優先順位でいえば、「どんな家に住みたいのか」という我が家に対する哲学の検証の方がはるかに重要だ。
「子供に好きなだけピアノを弾かせたい」と思っている人と「休日は一日中静かに本を読んで過ごしたい」と思っている人が、三〇〇〇万円前後の一次取得者向けのマンションに上下階あるいは両隣で接して住むことになったら、まず間違いなくピアノ騒音を巡るトラブルになる。
こういう人たちは、いくらそれが予算的に限度だとしても「いまが買い時」などと煽られて低価格の物件に飛びついてはいけないのだ。
自分や妻や子供のライフスタイルを実現するにはどういう住宅が必要なのか、その点を熟慮することなく、財布の許す範囲内で住宅取得に走れば、自分たちはもとより周囲の人間をも必ず不幸にする。
子供に自由にピアノを弾かせたいなら、もっとお金を貯めて、周囲から文句の出ないような遮音・防音性能に優れたグレードの高いマンションを貰うべきなのだ。
あるいは「休日は一日中静かに本を……」と思っている人も、その希望がかなうような周辺環境や物件性能を確保する必要がある。
「どんな家に住みたいか」を考えるとは、つまりそういうことだ。
プライオリティのトップに来るべきは、我が家に対する哲学であって、絶対に金利や税制など財布を覗き見ながらの損得勘定であってはならない。
もともとマイホームは「ブームや特需で買うな」というのが鉄則だ。
需要の急増期には腕のいい職人不足やタイトな工期日程などから粗製濫造の質の悪い物件が増えるからだ。
神戸の震災後の「復興特需」では「二次災害」といわれるほど欠陥住宅が続出したが、これも職人不足から素人職人が大量に現場に入って突貫工事をしたのが一因といわれている。

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